セーフティドライバー(保安運転手)とは|結論
この記事の結論
セーフティドライバーは、試験中の自動運転車の運転席に乗り、周りと車の状態を見続けて、危ないときに運転を代わる人です。
法令上の職名ではありませんが、警察庁の公道実証実験のガイドラインでは運転席の人は「運転者」で、システムが操作している間も事故や違反の責任を負います。ハンドルを常に握っている必要はない一方、見通しの悪い場所や交通量の多い場所では握るか、すぐ握れる位置に手を置くよう求められています。必要な免許は車の種類に応じた運転免許で、確認した公式求人で二種免許を必須にしたものはありませんでした。ただし、運転者としてお客様を乗せて運ぶ運行では、道路交通法第86条により二種免許が関わります。運転者のいないレベル4で車内に乗る人は「特定自動運行主任者」で、セーフティドライバーとは法律上の立場が違います。
自動運転のニュースで「セーフティドライバーが同乗」と書かれていても、その人が車内で何をしていて、どんな決まりの中で働いているのかは、あまり説明されません。
この記事では、警察庁のガイドラインと許可基準、道路交通法、国土交通省の手引き、各社の公式求人と発表という一次情報から、セーフティドライバーの車内での仕事、介入の決まり、事故のときの対応、必要な免許を整理します(2026年10月18日時点)。
セーフティドライバーは法律上の「運転者」|運行の形で立場が変わる
自動運転の車に人が乗っていても、その人の法律上の立場は運行の形によって違います。公表資料をもとに整理すると次のとおりです。
| 運行の形 | 車内の人の立場 | 根拠 | 免許の考え方 |
|---|---|---|---|
| 公道実証実験(運転席に人が乗る。レベル2相当など) | 運転者(ガイドラインの呼び方は「テストドライバー」) | 警察庁「自動走行システムに関する公道実証実験のためのガイドライン」 | 実験車両の種類に応じた運転免許 |
| 遠隔型の公道実証実験(運転席に人が乗らない) | 運転者は離れた場所の監視・操作者。車内に「保安要員」を置くことがある | 警察庁「自動運転の公道実証実験に係る道路使用許可基準」(令和6年9月) | 保安要員は乗る車の種類に応じた運転免許 |
| レベル4(特定自動運行)で車内に乗る形 | 運転者はいない。乗るのは特定自動運行主任者(保安員を兼ねることが多い) | 道路交通法第75条の20 | レベル4で走っている間は二種免許は不要(国土交通省の手引き第3版) |
いま「セーフティドライバー」と呼ばれているのは、主に1つ目の形です。日産が横浜で行う実証(2026年10月1日〜12月18日)は、車両を「セーフティドライバーが同乗する自動運転SAEレベル2相当」と説明しています。レベル4の車内の人の仕事は遠隔監視オペレーターの仕事と特定自動運行保安員とはで扱います。
車内で何をするか|監視・手の位置・操作の受け渡し
警察庁のガイドライン(平成28年5月)は、運転席の人の仕事を次のように書いています(要約)。
- 監視を続ける:自動走行システムで走っている間、必ずしもハンドルなどを握っている必要はないが、常に周囲の道路交通状況や車両の状態を監視し、緊急時には直ちに必要な操作ができる必要がある。
- 場所で手の位置を変える:見通しがよく交通量が少ない場所ではアームレストや膝の上に手を置く程度でもよいが、見通しの悪い場所や交通量の多い場所では、ハンドルなどを握るか、すぐ握れるように手を近くに置くべきとされる。
- 操作の受け渡しを確かめる:システムは自動走行の開始・終了のときに警報音などで運転席の人にはっきり知らせ、操作の権限の受け渡しが適切に行われるものにすべきとされる。
- 2人で役割を分けることもある:安全確保の措置の例として、運転席の人に加えてもう1人が同乗し、その人がシステムの状況を、運転席の人が周囲の交通を見る、という役割分担が挙げられている。
会社の求人も同じ内容を仕事として書いています。Wayveの Vehicle Safety Operator の求人(2026年10月5日掲載)は、公道試験中に自動運転システムを安全に監視し、必要なときはいつでも介入すること、AIの運転を改善するためエンジニアや研究チームに整理したフィードバックを返すこと、車両・試験・安全に関わる問題を正確に報告することを挙げています(英文を編集部で要約)。
1日の流れ|出走前の打ち合わせから日々の報告まで
セーフティドライバーの1日は、走っている時間だけでは終わりません。大阪でデータ収集の車両を運用するnewmoは、拠点の運用担当(Field Integration Engineer)の求人で、その仕事に「出走前後のセーフティドライバーとの打ち合わせ、チェックリスト運用の徹底、勤怠確認」「セーフティドライバーからの日々の報告内容の一次確認、気になる点のエスカレーション」を挙げています。ここから、セーフティドライバー側の流れは次のように読み取れます。
| 場面 | 求人から読み取れること |
|---|---|
| 出走前 | 運用担当との打ち合わせ、チェックリストの確認、勤怠の確認 |
| 走行中 | 自動運転システムの監視と、必要なときの介入(Wayve) |
| 出走後 | 運用担当との打ち合わせ、日々の報告(newmo)。エンジニアへのフィードバックと問題の報告(Wayve) |
報告は、運用担当が一次確認したうえで開発チームに上げられます。自分が感じた違和感が開発の材料になるため、短い言葉で正確に伝える力が求められます。
事故や違反のときにすること
ガイドラインは、運転席の人が「常に道路交通法を始めとする関係法令における運転者としての義務を負い」、事故や違反があったときは運転者としての責任を負うことを認識する必要があるとしています。実験を行う会社の社員でない人がこの役を務める場合は、会社がそのことを確認した書面を取るべきともしています。
交通事故が起きたときは、道路交通法第72条に基づいて、直ちに運転を止め、負傷者を救護し、道路での危険を防ぐなどの措置をとり、警察官に事故の状況などを報告する必要があります。事故の原因が自動走行システムの不具合やシステムへの過信の可能性があるときは、会社は原因を調べ、再発防止策をとるまで同じ種類の実験を控えるべきとされています。
あとで検証できるよう、実験車両にはドライブレコーダーやイベントデータレコーダーを積み、車両の前方だけでなく後方や車内の状況も記録することが望ましいとされています。運転席の人の操作も記録に残る、ということです。
必要な免許|一種でよい場面と二種が関わる場面
ガイドラインは、運転席の人は実験車両の種類に応じた運転免許を持っている必要があるとしています。2026年10月18日に確認した公式求人の条件は、Wayveが日本の運転免許を5年以上保有、Turingの自動運転開発ドライバーが普通自動車第一種(AT限定可)で取得後5年以上、T2の大型トラックが大型自動車免許でした。二種免許を必須にした求人はありませんでした。
二種免許が関わるのは、お客様を運ぶときです。道路交通法第86条は、旅客自動車運送事業として旅客を運送する目的で運転する人に二種免許を求めています。運転席の人が法律上の運転者である運行で、タクシーやバスとしてお客様を乗せるなら、条文に当てはめると二種免許が必要になると読めます。国土交通省の手引き第3版(2026年9月)も、運行の主体ごとの役割の表で、「運行や乗降時の安全を確保する」役割を、レベル2の運行では「二種免許の運転手が実施」と整理しています(109ページ)。各社の発表は、ロボタクシーの試験で同乗する乗務員の免許の種類までは書いていません。
反対にレベル4では、手引きは「特定自動(レベル4)運行中は二種免許は不要であるが、運行形態によっては二種免許を保有した者が乗車することもあることに留意」としています(109ページ)。遠隔型の公道実証で車内に乗る「保安要員」には、乗る車の種類に応じた運転免許が求められます(道路使用許可基準)。
いま日本でこの役を担っている人
2026年10月18日時点で、各社の公式発表・公式求人から確認できる「車に乗って見守る人」です。
| 取り組み | 車に乗る人(公表どおり) | 出典 |
|---|---|---|
| GO・Waymo・日本交通(東京) | 日本交通の乗務員が同乗した自動走行試験を実施中 | 日本交通 2026年9月15日の発表 |
| Uber・Wayve・日産(東京、2026年後半に試験運行の予定) | 初期段階は日の丸交通の乗務員が「セーフティドライバー」として同乗する計画 | Uber 2026年8月13日の発表 |
| 日産ほか(横浜の実証) | セーフティドライバーが同乗するレベル2相当の車両 | 日産 2026年9月14日の発表 |
| Wayve(東京・横浜の開発試験) | 自社で募集する Vehicle Safety Operator | Wayve 公式求人(給与は公表なし) |
| newmo(大阪の開発車両) | 求人にセーフティドライバーとの打ち合わせ・報告確認の業務が記載 | newmo 公式求人 |
東京のロボタクシーの試験では、タクシー会社の乗務員がこの役を担っています。陣営ごとの働く人の目線での整理はロボタクシーで働くにはにまとめました。求人はセーフティドライバーの求人から探せます。試験のために運転する仕事全般はテストドライバーとはで解説しています。
出典・一次情報
本記事の記述は、次の公表資料・法令・公式発表・公式採用ページに基づいています(いずれも2026年10月18日閲覧)。
- 警察庁「自動走行システムに関する公道実証実験のためのガイドライン」(平成28年5月) npa.go.jp(PDF)
- 警察庁「自動運転の公道実証実験に係る道路使用許可基準」(令和6年9月) npa.go.jp(PDF)
- 道路交通法 第72条・第75条の20・第86条(e-Gov法令検索) laws.e-gov.go.jp
- 国土交通省「自動運転移動サービス社会実装・事業化の手引き」第3版(2026年9月) mlit.go.jp(PDF)
- Wayve「Vehicle Safety Operator」(2026年10月5日掲載) Wayve 採用ページ
- newmo「Field Integration Engineer(実車運用 / 大阪)」 newmo 採用ページ
- Turing「【契約社員/フルタイム勤務】自動運転開発ドライバー」 Turing 採用ページ
- GO・Waymo・日本交通「自動運転タクシー商用化の実現に向けて合意」(2026年9月15日) 日本交通 ニュースリリース
- Uber「ロボタクシー試験運行の運行パートナーとして、日の丸交通と合意」(2026年8月13日) Uber ニュースルーム
- 日産自動車「2026年度の横浜市における自動運転モビリティサービス実証実験」(2026年9月14日) 日産ニュースルーム
法令の読み方について
二種免許の要否についての記述は、道路交通法第86条の条文と国土交通省の手引きに基づく整理で、個別の運行での扱いを示すものではありません。実際の運行の扱いは、運行する事業者と所管の行政機関の判断によります。


