特定自動運行保安員とは|結論

この記事の結論

特定自動運行保安員は、運転者のいないレベル4のバスやタクシーで、お客様を運ぶ運行の安全を確保する人として、旅客自動車運送事業運輸規則で決められた役割です。
事業者は十分な数の保安員を常に選任し、車に乗務させるか、営業所などから遠隔監視装置で業務をさせなければなりません。条文には、酒気を帯びての業務の禁止、体調不良の申し出、重大な故障での運行中止、踏切での避難誘導、交替時の引き継ぎなどの決まりが並び、タクシーでは回送板の掲出、定員11人以上のバスでは運行時刻前の発車の禁止などもあります。保安員は運転者と同じく点呼・乗務員等台帳・指導監督の対象ですが、点呼で保安員に確認されるのは点検の実施と自動運行装置の設定の状況で、運転免許の記載や適性診断は運転者だけに求められています。運転免許の要件は条文に書かれておらず、国土交通省の手引きはレベル4で走っている間は二種免許は不要としています。

レベル4の自動運転には「特定自動運行主任者」「現場措置業務実施者」「特定自動運行保安員」と似た名前の役割が出てきます。このうち保安員は、道路交通法ではなく、バスやタクシーの事業のルールである旅客自動車運送事業運輸規則で決まっている役割です。

この記事では、運輸規則の条文(e-Gov法令検索)と国土交通省の「自動運転移動サービス社会実装・事業化の手引き」第3版(2026年9月)をもとに、保安員の業務、点呼や指導監督で運転者と同じ所・違う所を条文に沿って整理します(2026年10月18日時点)。

保安員とは何か|条文の定義と、ほかの役割との違い

運輸規則第15条の2第1項は、特定自動運行旅客運送を行おうとする旅客自動車運送事業者は、事業計画(路線バスは運行計画も)の遂行に十分な数の特定自動運行保安員を「常時選任しておかなければならない」と定めています。保安員は、条文のかっこ書きで、特定自動運行事業用自動車の「運行の安全の確保に関する業務を行う者」とされています。

役割決めている法令置かなければならない場面中心になる仕事
特定自動運行主任者道路交通法レベル4の運行すべて(公安委員会の許可を受けた運行)遠隔監視装置の監視、運行の終了、事故時の通報・報告など
現場措置業務実施者道路交通法主任者が車に乗らない運行事故の現場に向かい、危険を防ぐ措置をとる
特定自動運行保安員旅客自動車運送事業運輸規則(自家用有償旅客運送は道路運送法施行規則)お客様を運ぶ事業として運行するとき運行と乗り降りの安全の確保、旅客の避難誘導、点呼を受けるなど

国土交通省の手引き第3版は、保安員を「運行や乗降時の安全を確保する人」と説明し、「有償運行をする際は配置が必須」としています(109ページ)。また、道路交通法上の主任者・現場措置業務実施者と、道路運送法上の保安員は「兼務可能」としています。実際、茨城県日立市のひたちBRTは「特定自動運行主任者(特定自動運行保安員を兼務)1名体制」で運行しています。主任者の仕事は遠隔監視オペレーターの仕事で詳しく扱っています。

車に乗るか、営業所から遠隔か|第15条の2第2項の2つの方法

第15条の2第2項は、次のどちらかの措置をとらなければ、特定自動運行事業用自動車をお客様の運送に使ってはならないとしています。

方法条文の内容手引きでの呼び方
乗務させる特定自動運行事業用自動車に保安員を乗務させる(第1号)乗務員乗車型(主任者と保安員を兼ねた乗務員が乗る形)
遠隔から業務をさせる緊急のときに旅客が保安員に連絡できる装置と、車を止められる装置を車に備えたうえで、営業所その他の適切な業務場所に保安員を置き、遠隔監視装置などを使って遠隔から運行の安全の確保に関する業務をさせる(第2号)遠隔監視型(主任者(保安員兼務)が遠隔監視装置を使う形)

同条第3項は、事業者に、保安員の業務を含む輸送の安全の措置を適切にとれるよう「必要な体制を整備」することも求めています。保安員として働く人から見ると、車内の乗務員として働くか、営業所の遠隔の席で働くかは、その事業者がどちらの方法を選んでいるかで決まります。

保安員がしなければならないこと|第15条の2第4項〜第12項

条文は、事業者が保安員に「させなければならないこと」「させてはならないこと」「守らせなければならないこと」の形で書かれています。保安員の側から見た決まりに直して並べます。

場面決まり(条文の要約)項
事故・運行の中断運行を中断したときや旅客が死傷したときは、事業者とともに必要な措置を行う。旅客の生命を守る処置をほかの処置より先にする第4項
してはならないこと旅客のいる車内に危険物などを持ち込む、酒気を帯びて運行の業務に従事する、車内で喫煙する第5項
申し出酒気を帯びているとき、病気・疲労・睡眠不足・天災などで安全に業務ができないおそれがあるとき(運行中にそうなったときも)は事業者に申し出る第8項第1〜3号
重大な故障運行中に重大な故障を見つけたり、重大な事故のおそれがあると認めたりしたときは、直ちに運行を中止し事業者に報告する第8項第4号
坂道・危険な箇所坂道で車(遠隔の場合は遠隔監視装置)から離れるときや、安全な運行に支障がある箇所を通るときは旅客を降ろす第8項第5号
踏切故障などで踏切内で動けなくなったら、速やかに旅客を誘導して避難させ、列車に対して適切な防護措置をとり、事業者に報告する第8項第6号
扉と発車停車前に乗降口の扉を開かない。発車音を鳴らすときは安全を確かめ扉を閉めてから。扉が閉まったことを確かめてから発車させる第8項第7〜9号
交替業務を終えたら、交替する保安員に車・道路・運行の状況を伝える。その際、制動装置・走行装置などの重要な部分の機能を点検する第8項第10号
服装業務の実施に支障が出るおそれのある服装をしない。乗務するときは制服などで保安員であることを示す第8項第11号・第12項

「運転」の操作はシステムが行いますが、お客様の安全に関わる場面での判断と行動は、保安員の仕事として細かく決められています。

バスとタクシーで違う決まり

事業の種類で追加される決まりもあります。

  • バス(乗合・貸切・特定):乗車定員11人以上の車では、運行時刻前に発車しない、旅客のいる車の走行中に職務に必要なこと以外の話をしない(第6項)、発車の直前に安全を確認できた場合を除き、警音器を鳴らす(第9項)。また、車内で法令や公の秩序に反する行為をする旅客を制止するなどして秩序を保つよう努める(第7項)。
  • タクシー(一般乗用):保安員が食事や休憩で運送を引き受けられないときや、業務の終了などで車庫や営業所へ回送するときは回送板を掲げ、それ以外のときは掲げない(第10項・第11項)。

タクシーの回送板の決まりがそのまま保安員に置き換えて書かれている点は、ロボタクシーでも「休憩」や「回送」を管理する人が要ることを示しています。

点呼・台帳・指導監督|運転者と同じ所、違う所

運輸規則は、保安員を運転者と並べて「運転者等」として扱う条文と、運転者だけに求める条文を書き分けています。

項目運転者特定自動運行保安員条文
業務前の点呼点検の実施、酒気帯びの有無、疾病・疲労・睡眠不足などで安全な運転ができないおそれの有無を確認点検の実施と、運送に必要な自動運行装置の設定の状況の確認第24条第1項
業務後の点呼車・道路・運行の状況の報告、酒気帯びの有無の確認車・道路・運行の状況の報告。交替したときは引き継ぎ(通告)の報告第24条第2項
点呼の記録運転者等ごとに記録し1年間保存(貸切バスは別に定め)同じ第24条第5項
乗務員等台帳氏名・生年月日・住所、雇入れ・選任の年月日、運転免許の番号・種類・条件、運転の経歴、事故の概要、健康状態、指導と適性診断の状況、写真氏名など・選任の年月日・事故の概要・健康状態・写真(運転免許・運転の経歴・適性診断の項目は「運転者に対しては」とされている)第37条第1項
やめたとき台帳に年月日と理由を書き3年間保存同じ(第5項)第37条第2項・第5項
指導監督告示に沿った指導監督と記録(3年保存)。事故を起こした人・新たに雇い入れた人・65歳以上などへの特別な指導と適性診断運行の安全を確保するために守るべき事項の適切な指導監督と記録(3年保存)。特別な指導・適性診断の規定は運転者が対象第38条

酒気帯びについては、点呼の確認項目(第24条)は「運転者に対しては」と書かれていますが、保安員も酒気を帯びて業務に従事させてはならず(第15条の2第5項、第21条第4項)、酒気を帯びているときは申し出ることになっています(第15条の2第8項)。運行管理者の業務には、保安員を乗務させ、または遠隔から業務を行わせること、選任された保安員以外の者を運行の業務に従事させないことが加えられています(第48条)。

勤務時間と健康管理

運輸規則第21条(過労防止等)のうち、国土交通大臣の告示に従って勤務時間と乗務時間を定める第1項は「運転者」が対象です。一方、休憩・睡眠の施設の整備(第2項)、酒気を帯びた状態での業務の禁止(第4項)、健康状態の把握と、体調が悪いおそれがある人を業務に就かせないこと(第5項)、運行中に業務を続けられないおそれがあるときの指示(第7項)は「乗務員等」が対象で、保安員も含まれます。

国土交通省の手引き第3版も、自動運転時の乗務員・遠隔監視者は「改善基準告示の対象外」で、運転手のような連続運転時間や拘束時間の制約はなく、交代制にすれば長時間の営業運行ができる、と整理しています(178ページ)。働く側から見ると、勤務の長さや休憩の取り方は、事業者の就業規則と労働契約で確かめる必要がある、ということです。

保安員に免許や資格はいるのか

第15条の2には、保安員の運転免許の要件は書かれていません。国の試験や講習の規定もありません。国土交通省の手引き第3版は「特定自動(レベル4)運行中は二種免許は不要であるが、運行形態によっては二種免許を保有した者が乗車することもあることに留意」としています(109ページ)。

ただし、保安員を兼ねる主任者が運行終了後に車を手で運転して移動させる予定なら、その車に応じた運転免許が必要になります(警察庁の記載要領)。日立市のひたちBRTのように手動で走る区間がある路線では、手引きに「手動走行区間は運転手が車両操作を行います」と書かれています。必要な訓練は事業者が行い、手引き第3版の日立市の例には、手続きの一つとして「事業遂行に十分な数の特定自動運行保安員を選任し、必要な訓練を実施したうえで配置」(2025年1月17日実施、1月16日までに訓練実施)と記録されています(152ページ)。

保安員の仕事に就くには、レベル4の運行をしているバス会社・タクシー会社などに入ることになります。どこで運行が許可されているかはレベル4の許可が出ている場所の一覧、自動運転の現場の仕事の全体像は自動運転の現場の仕事の種類で確かめられます。保安員の職名の求人は、このサイトにはまだありません(2026年10月時点)。車に乗って見守る近い仕事はセーフティドライバーの求人から探せます。保安員の求人は、公式の採用ページで確かめられたら載せます。

出典・一次情報

本記事の記述は、次の法令と公表資料に基づいています(いずれも2026年10月18日閲覧)。

  • 旅客自動車運送事業運輸規則 第15条の2・第21条・第24条・第37条・第38条・第48条(e-Gov法令検索) laws.e-gov.go.jp
  • 国土交通省「自動運転移動サービス社会実装・事業化の手引き」第3版(2026年9月) mlit.go.jp(PDF)(掲載ページ mlit.go.jp)
  • 警察庁交通局「特定自動運行許可に係る申請書等の記載要領」(令和8年3月) npa.go.jp(PDF)
  • 道路交通法 第75条の19・第75条の20(e-Gov法令検索) laws.e-gov.go.jp

条文の読み方について

表は条文を編集部で要約したもので、正確な文言はe-Gov法令検索で確認してください。個別の運行での扱いは、事業者と地方運輸局などの判断によります。