テストドライバーに必要な資格・免許・運転歴|結論
この記事の結論
テストドライバーになるための国家資格はなく、法令上必要なのは走らせる車に応じた運転免許です。
ただし公式求人の多くは、免許の種類に加えて「取得後5年以上」などの運転歴と、過去3年間の無事故・無違反(Turing)や有責の保険請求がないこと(Wayve)を条件にしています。警察庁の公道実証実験のガイドラインも、相当の運転経験と優れた運転技術、システムの理解、事前の習熟を確かめるよう実施主体に求めています。入社後は、トヨタの「試験車運転資格」(初級・中級・上級・S1・S2の5区分)のように、会社が独自の資格や研修で段階を決めている例があります。選考では運転記録や累積点数の証明書を求められることがあり、自動車安全運転センターで1通800円で発行されます。
テストドライバーの求人を見ると「普通免許」「運転歴5年以上」「無事故無違反」といった言葉が並びます。どれが法律で決まっていることで、どれが会社の条件なのかを分けて知っておくと、応募できるかどうかを判断しやすくなります。
この記事では、警察庁のガイドラインと許可基準、会社の公式採用ページ、トヨタ自動車のオウンドメディア、自動車安全運転センターの案内という一次情報だけで整理します(2026年10月18日時点)。仕事内容と給与はテストドライバーとはで解説しています。
国の指針が求めること|運転免許と「相当の運転経験」
警察庁の「自動走行システムに関する公道実証実験のためのガイドライン」(平成28年5月)は、緊急時の操作のために運転席に乗る人を「テストドライバー」と呼び、その要件を次のように示しています(要約)。
| ガイドラインの項目 | 内容 | だれが確かめるか |
|---|---|---|
| 5(1) | 実験車両の種類に応じ、法令に基づき運転に必要とされる運転免許を保有している必要がある | 法令上の義務 |
| 5(2) | 常に運転者としての義務を負い、事故や違反のときは運転者としての責任を負うことを認識する必要がある | 法令上の義務(実施主体の構成員でない場合は確認の書面をとる) |
| 5(3) | 実験施設での確認を終えて当分の間は、①相当の運転経験を有し、かつ運転技術が優れていること、②自動走行システムの仕組みや特性を十分に理解していること、③公道実証実験の前に実験施設で自らシステムを使って運転し、緊急時の操作に習熟していること | 実施主体(実験を行う会社) |
| 5(4) | 5(3)を満たさない人をテストドライバーにする場合は、要件を満たすテストドライバーで安全を十分に確かめておくこと、システムをよく知る人が事前に十分説明し、同乗して操作を補助するなどの措置をとること | 実施主体 |
つまり、法令で必ず必要なのは運転免許で、「運転経験」「システムの理解」「事前の習熟」は、実験を行う会社が確かめる事項です。会社が求人で運転歴の年数を条件にしたり、入社後に研修を課したりするのは、この考え方と合っています。
遠隔で監視・操作する場合の条件
運転席に人が乗らず、離れた場所から監視・操作する公道実証実験については、警察庁の「自動運転の公道実証実験に係る道路使用許可基準」(令和6年9月)が条件を定めています。監視・操作者は法上の運転者として、実施主体から教育・訓練を受けていること、実験車両の種類に応じた運転免許を受けていることが必要で、旅客自動車運送事業として旅客を運ぶ目的で走らせる場合は第二種運転免許が必要とされています。遠隔の仕事の詳しい区別は遠隔監視オペレーターの仕事で説明しています。
公式求人の免許・運転歴・違反歴の条件
2026年10月18日に各社の公式採用ページで確認した応募条件です(必須の条件だけを抜き出しています)。
| 会社・職種 | 免許 | 運転歴 | 事故・違反・保険の条件 |
|---|---|---|---|
| Turing 自動運転開発ドライバー(フルタイム・パートタイム共通) | 普通自動車第一種運転免許(AT限定可/MT歓迎) | 免許取得後5年以上。日常的に車を運転していること | 重大事故/重大違反がないこと、過去3年間無事故/無違反 |
| Wayve Vehicle Safety Operator | 日本の運転免許("full, clean") | 免許を5年以上保有。日本での十分な運転経験と、複雑な市街地での運転への自信 | 過去3年間に有責の保険請求がないこと |
| Wayve Fleet Operations Trainer | 日本の運転免許("full, clean") | 運転歴8年以上(主に日本) | 過去3年間に有責の保険請求がないこと |
| T2 大型トラック テストドライバー | 大型自動車第一種運転免許 | 大型トラックの運転経験5年以上 | 記載なし(安全運転・運行管理の知識または経験を求める) |
| T2 オペレーションドライバー | 大型自動車免許 | 大型トラックの運行経験3年以上 | 記載なし(安全管理の知見と実施経験、法規走行を求める) |
乗用車の求人では「免許取得後5年以上」がそろって条件になっています。違反については、Turingが「重大事故/重大違反がない」ことと「過去3年間無事故/無違反」の両方を求めているのに対し、Wayveは原文で "full, clean Japanese driving license" と書き、加えて過去3年間に有責の保険請求がないことを求めています。"clean" がどの範囲の違反を指すかは求人に書かれていないため、気になる場合は応募前に問い合わせてください。
社内の運転資格|入社してから段階的に取るもの
テストドライバーの技能を、会社が自分で決めた資格や研修で段階づけている例があります。いちばん詳しく公表されているのは、トヨタ自動車の「試験車運転資格」です。トヨタイムズの連載(2023年3月9日・12月1日)の記載を表にします。
| 区分 | トヨタイムズの説明 |
|---|---|
| 初級・中級 | 5区分のうちの下の2つ(個別の基準は記事に記載なし) |
| 上級 | 業務上、車両評価を行うには「上級」の資格があれば充分。18歳で入社した評価ドライバーが一般的に取得できるのは25歳 |
| S1 | 技術部のみのライセンス。どの環境でも限界域で車両コントロールと評価技能を持つ。ラップタイムの目標も設定され、安全性の判断もドライバーに委ねられる。一般的に30歳 |
| S2 | 初めて走るコース・初めて乗る車両でも短時間で限界域までの走行ができ、ラップタイムが2分ならプラスマイナス1秒以内でばらつきなく周回できる。社内に約200名(2023年3月の記事時点) |
同じ記事は、運転資格の区分では単なる運転技術だけでなく精神面の育成も行い、いかに安定した精神状態で車を評価できるかも重視していると説明しています。
自動運転の開発会社でも、入社後の研修と社内の認定を前提にしている例があります。Wayveは Vehicle Safety Operator の採用を「研修の修了」が条件だとし、同社の Fleet Operations Trainer の求人は、歓迎条件に「現在有効な資格を持つ Vehicle Safety Operator」("A qualified Vehicle Safety Operator with a current qualification")を挙げています。T2のテストドライバーの求人には、テストドライバー育成カリキュラムの企画・運用、座学研修、同乗・追走しながらの実技指導、ドライバー評価が仕事として並んでいます。
選考で出す書類|運転記録証明書と累積点数等証明書
Wayveは選考の書類確認で、運転免許と運転記録(Driving Record)、累積点数の証明書(Cumulative Points Certificate)を確認すると書いています。日本で運転の経歴を証明する書類は、自動車安全運転センターが発行しています。同センターの案内では次の4種類です。
| 証明書 | 証明する内容(センターの説明) |
|---|---|
| 無事故・無違反証明書 | 無事故・無違反で経過した期間 |
| 運転記録証明書 | 過去5年・3年または1年の交通違反、交通事故、運転免許の行政処分の記録 |
| 累積点数等証明書 | 交通違反や交通事故の点数が、現在何点になっているか |
| 運転免許経歴証明書 | 過去に失効した免許、取り消された免許、現在受けている免許の種類と取得年月日など |
交付手数料は1通800円(消費税非課税)で、ゆうちょ銀行・郵便局から申し込むか、各都道府県のセンター事務所の窓口で申し込みます。郵便で受け取る場合は申し込みから1〜2週間程度かかり、窓口でも即時の交付は行っていないと案内されています。専用の申請アプリを使ってインターネットから本人が申し込むこともできます。選考の日程に間に合うよう、早めに取り寄せておくとよいでしょう。Turingのように、応募書類に無事故・無違反歴や年間走行距離を書くよう求める会社もあります。
歓迎される資格・経験
必須ではないものの、公式求人が「歓迎」として挙げている資格や経験です。
| 会社 | 歓迎の資格・経験(公表どおり) |
|---|---|
| Turing | サーキット走行・ジムカーナ・ラリー・カート等の経験、JAF国内ライセンス等の競技ライセンス、自動車メーカー・サプライヤー・テスト会社での実験・評価ドライバー経験、ハイヤー・タクシー・送迎ドライバー等の実務経験、緊急車両の運転経験、安全運転表彰・優良ドライバー表彰などの受賞歴 |
| T2(オペレーションドライバー) | 乗用車または大型車両開発でのテストドライバー経験、けん引免許、運行管理者資格、安全管理者資格、整備士経験(2級ディーゼル整備士以上)、自動二輪・大型自動二輪免許、官能評価・定量評価の実務経験 |
| T2(テストドライバー) | 牽引免許、トレーラ運転経験、テストドライバー・評価・実験業務の経験、大型車両の教育・指導経験、ADAS/自動運転分野の知識や経験 |
| Wayve(Vehicle Safety Operator) | 上級の運転資格(原文の例は ADI、Emergency Response Advanced Driver など)、日本の市街地と高速道路の運転への深い慣れ |
大型トラックでは運行管理者や整備士の資格が評価される一方、乗用車では競技ライセンスや表彰歴など「運転の質」を示すものが挙がっています。
二種免許はいらないのか
確認した公式求人で、二種免許を必須にしたものはありませんでした。道路交通法第86条は、二種免許が必要な人を「旅客自動車運送事業に係る旅客を運送する目的で運転しようとする者」と定めており、お客様を乗せない試験走行やデータ収集はこれにあたりません。
一方で、先に挙げた警察庁の道路使用許可基準は、遠隔の監視・操作者について、旅客を運ぶ目的で走らせる場合は第二種運転免許が必要としています。自動運転の車にお客様を乗せる段階に入ると、乗る人や監視する人の法律上の立場によっては二種免許が関わってきます。車内で見守る人の立場の違いはセーフティドライバー(保安運転手)とはで整理しています。
勤務の条件はテストドライバーはきつい?、求人はテストドライバー・開発ドライバーの求人で確かめられます。
出典・一次情報
本記事の記述は、次の公表資料・法令・公式採用ページに基づいています(いずれも2026年10月18日閲覧)。
- 警察庁「自動走行システムに関する公道実証実験のためのガイドライン」(平成28年5月) npa.go.jp(PDF)
- 警察庁「自動運転の公道実証実験に係る道路使用許可基準」(令和6年9月) npa.go.jp(PDF)
- 道路交通法 第86条(e-Gov法令検索) laws.e-gov.go.jp
- トヨタイムズ「機械ではなく、人にしか感知できないこと。これぞクルマ屋の真髄」(2023年3月9日) toyotatimes.jp/「忖度なしの実験企画!24歳vsベテラン クルマを正しく評価できるのは?」(2023年12月1日) 同
- 自動車安全運転センター「運転経歴に係る証明書」 jsdc.or.jp/「申請方法」 同
- Turing「【契約社員/フルタイム勤務】自動運転開発ドライバー」 Turing 採用ページ/「【有期パートタイム社員/業務委託】自動運転開発ドライバー」 同
- Wayve「Vehicle Safety Operator」 Wayve 採用ページ/「Fleet Operations Trainer」 同(いずれも2026年10月5日掲載)
- T2「【ドライバー】大型トラック テストドライバー」 T2 採用ページ/「【ドライバー】オペレーションドライバー(大型トラック自動運転システム)」 同
条件の変更について
応募条件は閲覧日時点で各社の公式採用ページに掲載されていた内容で、予告なく変わります。証明書の手数料や申請方法は自動車安全運転センターの最新の案内を確認してください。トヨタイムズの内容は2023年の掲載時点のものです。

