テストドライバーとは|結論

この記事の結論

テストドライバーは、開発中の車を決められた条件で運転し、車やシステムの動きを評価して開発者に伝える仕事です。
大きく分けると、自動車メーカーなどで車の乗り味や性能を確かめる「評価ドライバー」と、自動運転AIのデータ収集やテスト走行を担う「自動運転の開発ドライバー」があります。給与を公表している公式求人では、Turingの自動運転開発ドライバー(契約社員)が時給2,500円〜4,500円、パートタイムが時給2,000円〜、T2の大型トラックのテストドライバー(正社員)が月収28.5万円〜60万円(固定残業50時間分を含む)でした。Wayveの公道試験の職種は給与を公表していません。なり方は、自動運転の開発会社の公式求人に応募する、メーカーで評価ドライバーとして育成される、大型トラックの運転経験を生かす、の3つの入口が公式資料から確認できます。

「テストドライバー」は、運転がうまい人がサーキットを速く走る仕事、と思われがちです。けれども公式の求人や自動車メーカーの資料を読むと、求められているのは速さよりも「同じ運転を何度でも再現できること」と「感じたことを言葉にして伝えること」だとわかります。

この記事では、会社の公式採用ページ、トヨタ自動車のオウンドメディア「トヨタイムズ」、警察庁の公道実証実験のガイドラインという一次情報だけを使い、テストドライバーの仕事内容、公表されている給与、なり方を整理します(2026年10月18日時点)。口コミや「平均年収○○万円」といった出典のわからない数字は使っていません。

テストドライバーは大きく2種類|評価ドライバーと自動運転の開発ドライバー

同じ「テストドライバー」でも、どんな車を何のために走らせるかで仕事の中身が変わります。公表資料から確認できる代表的な例を並べます。並び順は順位ではありません。

種類公表資料の例主な仕事(公表どおり)求められること(公表どおり)
評価ドライバー(自動車の開発)トヨタ自動車(トヨタテクニカルセンター下山、士別試験場)開発車両の評価テストを行い、乗り味や性能を確かめる。寒冷地での試験も行う「できる・分かる・言える」の3つの能力。社内の試験車運転資格(初級〜S2)
自動運転の開発ドライバー(乗用車)Turing(東京都大田区平和島)一般道・高速道路での走行データ収集、自動運転AIのテスト走行・評価走行、走行中の記録と報告普通自動車第一種免許、免許取得後5年以上、過去3年間無事故・無違反、精度の高い運転
自動運転の開発ドライバー(大型トラック)T2(神奈川県海老名市)レベル4自動運転トラックの試験走行と評価、評価項目・基準の策定、テストドライバーの育成大型自動車第一種免許、大型トラックの運転経験5年以上
公道試験の安全オペレーターWayve(東京・横浜の拠点)公道試験で自動運転システムを監視し、必要なときに介入する。エンジニアへのフィードバック日本の運転免許を5年以上保有、過去3年間に有責の保険請求がないこと

自動運転の開発では、人が運転してデータを集める走行と、自動運転で走らせて人が見守る走行の両方があります。後者の「見守る」役を各社はセーフティドライバーやセーフティオペレーターと呼び、テストドライバーと同じ人が担うこともあります。違いはセーフティドライバー(保安運転手)とはで詳しく説明しています。

国の指針でも「テストドライバー」は運転者

警察庁の「自動走行システムに関する公道実証実験のためのガイドライン」(平成28年5月)は、公道実証実験で「緊急時に必要な操作を行うために運転者席に乗車する者」を「テストドライバー」と呼んでいます。そのうえで、テストドライバーは「常に道路交通法を始めとする関係法令における運転者としての義務を負い」、交通事故や違反があったときは運転者としての責任を負うことを認識する必要がある、としています。システムが運転操作をしている間でも、法律の上では運転席の人が運転者です。必要とされる運転経験や事前の習熟の中身はテストドライバーに必要な資格・免許・運転歴でまとめています。

仕事内容|1日の流れと「できる・分かる・言える」

Turingの自動運転開発ドライバーの求人には、1日の流れが次のように書かれています。

  1. 出社する
  2. 走行ルートの確認と、当日の注意点などの説明を受ける
  3. 走行する(適宜休憩をとる)
  4. 走行を終えたら報告する
  5. 1日の勤務を終える

走る前に条件を確かめ、走ったあとに報告する、という形が仕事の基本です。同社は求人で、停止位置・加減速・車線内でのライン取りなどを安定して高い精度で再現できる運転技術を求め、走行中の車両の挙動や自動運転AIの挙動を記録・報告すること、エンジニアや開発チームにフィードバックすることを業務に挙げています。

大型トラックのT2は、テストドライバーの役割を「自らハンドルを握り/自ら評価し/自ら教える」と書き、「『運転しない管理』ではなく、運転を通じて現場を理解し続ける役割」としています。業務には、公道・物流施設・テストコースでのテストプロトコルに基づく試験走行、自動運転と手動運転の両方での走行評価、試験結果の整理・分析・レポート作成、シミュレーターや計測機器を使った評価、テストドライバーの育成が並んでいます。

メーカーの評価ドライバーに求められる3つの力

トヨタイムズの連載(2023年2月28日)によると、トヨタで評価ドライバーを養成する「凄腕技能養成部」では、マスタードライバーだった成瀬弘氏が評価ドライバーの能力を「できる・分かる・言える」の3つと定義したと紹介されています。記事の説明を要約すると次のとおりです。

能力トヨタイムズの説明(要約)
できる求められた条件で確実に走り、同じ現象を何回でも再現させられる
分かるその現象がなぜ起こるのか、原因がサスペンションなのかボディ剛性なのかタイヤなのかが分かる
言えるエンジニアや関係部署に、起きている現象と原因、直すための手立てを言葉にして伝えられる

同じ連載の第2回(2023年3月9日)では、評価ドライバーは鉄のホイールの溶接が5mm伸びたことで生じる違いにも気づく、という例が紹介されています。自動運転の開発会社の求人も「走行中の違和感や車両挙動を具体的に言語化できる方」(Turing)を求めており、「言える」力が重視される点は共通しています。

年収・給与|公式求人で公表されている額だけを並べる

2026年10月18日に各社の公式採用ページで確認した給与の記載です。「公表なし」は採用ページに金額が書かれていないことを示します。

会社・職種雇用形態給与の記載求人に書かれた補足
Turing 自動運転開発ドライバー(フルタイム)契約社員(3か月ごとの更新)時給2,500円〜4,500円「年収換算で500万円~900万円程度の水準でオファーする想定」。契約時は時給で提示
Turing 自動運転開発ドライバー(パートタイム)有期パートタイム社員/業務委託(週3日以上)時給2,000円〜社会保険は条件を満たす場合のみ加入
T2 大型トラック テストドライバー正社員月収28.5万円〜60万円(基本給+固定残業手当50時間分)想定年収400万円〜900万円は「保証額ではありません」。賞与年2回(昨年度実績は合計3か月分)
T2 オペレーションドライバー(大型トラック自動運転システム)正社員/アソシエイト社員月収35.4万円〜53.3万円(同)想定年収500万円〜800万円(保証額ではないと明記)
Wayve Vehicle Safety Operatorフルタイム公表なし給与は毎年市場と比べて決めると記載("Salaries benchmarked against the market annually")
トヨタの評価ドライバー社員本記事では確認していないトヨタイムズの連載に給与の記載はない

T2の月収には、残業の有無にかかわらず支払われる50時間分の固定残業手当が含まれています。基本給だけを見るとテストドライバーは19.95万円〜42万円、オペレーションドライバーは24.7万円〜37.3万円です。Turingは時給の幅が広く、どこに決まるかは経験とスキルで判断すると書いています。

インターネット上には「テストドライバーの平均年収」といった数字も見かけますが、出典が確かめられないものはこの記事では使っていません。比べるときは、時給か月給か、固定残業代を含むか、雇用期間の定めがあるかを、同じ物差しにそろえてください。

なり方|公式資料から分かる3つの入口

入口1:自動運転の開発会社の公式求人に応募する

乗用車の開発ドライバーの求人は、普通免許(一種)と運転歴・無事故無違反が条件の中心です。Turingは「活かせる経験」として、レーシングドライバーやジムカーナ・ラリー・カート等の競技経験者、AD/ADASのテスト走行経験者、タクシー/ハイヤー/送迎ドライバー経験者、緊急車両でのドライバー経験者を挙げています。歓迎スキルには、JAF国内ライセンス等の競技ライセンス、自動車メーカー・サプライヤー・テスト会社での実験・評価ドライバー経験、安全運転表彰などの受賞歴が並びます。自動運転そのものの経験は必須にしていません。

入口2:自動車メーカーで評価ドライバーとして育成される

トヨタイムズの連載第7回(2023年12月1日)は、トヨタ工業学園在学中に凄腕技能養成部が新人を1名募集するという情報を得て志願した若手の例を紹介しています。同期120名を対象にした第1次選考で40名が選ばれ、卒業までの選考試験や実習を経て、入社と同時に同部に配属されたとあります。同じ記事は、評価ドライバーとして18歳で入社すると、一般的に社内資格の「上級」を取れるのが25歳、S1は30歳、S2はそれ以上だと説明しています。社内で年数をかけて育てる仕事だということがわかります。

入口3:大型トラックの運転経験を生かす

自動運転トラックのT2は、テストドライバーに大型自動車第一種免許と大型トラックの運転経験5年以上、オペレーションドライバーに大型自動車免許と大型トラックの運行経験3年以上を求めています。歓迎条件には、けん引免許、運行管理者資格、2級ディーゼル整備士以上の整備士経験などがあります。

募集が出ている求人はテストドライバー・開発ドライバーの求人にまとめていきます。勤務時間や選考の運転試験についてはテストドライバーはきつい?で確かめています。

応募する前に確かめたいこと

公式求人の書き方は会社ごとに違います。比べる前に、次の点をそろえておくと判断しやすくなります。

  1. 何の車を走らせるか:乗用車か大型トラックか。必要な免許の種類が変わります。
  2. 手動運転か、自動運転の見守りか:データ収集の手動運転が中心か、自動運転中の監視と介入が中心か。
  3. 給与の単位:時給か月給か、固定残業代が含まれるか、想定年収は保証額か。
  4. 雇用の形:契約の期間と更新の単位(Turingは3か月ごと)、正社員登用の有無。
  5. 勤務時間帯:早朝・夜間・週末のシフトがあるか。
  6. 運転記録の提出:運転記録や累積点数の証明書を求められるか。

自動運転の現場の仕事全体の見取り図は自動運転の現場の仕事の種類、未経験からの入口は未経験から自動運転の仕事に就くにはで整理しています。求人の一覧は自動運転の仕事の求人から探せます。

出典・一次情報

本記事の記述は、次の公表資料と公式採用ページに基づいています(いずれも2026年10月18日閲覧)。

  • 警察庁「自動走行システムに関する公道実証実験のためのガイドライン」(平成28年5月) npa.go.jp(PDF)
  • トヨタイムズ「『凄腕技能養成部』を徹底解剖! トヨタの『乗り味』はどのように決まる?」(2023年2月28日) toyotatimes.jp
  • トヨタイムズ「機械ではなく、人にしか感知できないこと。これぞクルマ屋の真髄」(2023年3月9日) toyotatimes.jp
  • トヨタイムズ「忖度なしの実験企画!24歳vsベテラン クルマを正しく評価できるのは?」(2023年12月1日) toyotatimes.jp
  • Turing「【契約社員/フルタイム勤務】自動運転開発ドライバー」 Turing 採用ページ/「【有期パートタイム社員/業務委託】自動運転開発ドライバー」 同
  • T2「【ドライバー】大型トラック テストドライバー」 T2 採用ページ/「【ドライバー】オペレーションドライバー(大型トラック自動運転システム)」 同
  • Wayve「Vehicle Safety Operator」(東京・横浜、2026年10月5日掲載) Wayve 採用ページ

求人の掲載について

給与・勤務・応募条件は閲覧日時点で各社の公式採用ページに掲載されていた内容です。募集は予告なく終わったり条件が変わったりします。応募前に各社の採用ページで最新の内容を確認してください。トヨタイムズの内容は2023年の掲載時点のものです。